2007年2月現在のhigh-zサーベイ状況

現在、スタンダードなNBサーベイでNB119(z=8.8)のLAEsサーベイを
行って論文になっているのは、

inst  tel filter  title       paper
--------------------------------------------------------------------------
DAzLE VLT NB105他 DAzLE       2006年末から開始  論文なし  NB105/105(z=7.7からサーベイ開始、z=8.8はまだ)
ISAAC VLT NB119   ZEN Survey  Willis et al.2006 未検出の論文
ISAAC VLT NB119               Cuby et al.2007   未検出の論文


z=6.5-7のLAEのLFと各サーベイのリミット(図は大内くん製作)

z=6.6 LAEの光度関数(黒線および黒丸; Kashikawa et al. 2006)、
z=7 LAEの光度関数(三角;Iye et al. 2006)
に加えて、
DAzLE, Cuby, Willis(ZEN)の広さ、深さからくる光度関数へのリミットです。
Cuby, Willisはz=6.6 LAEの無進化の場合の光度関数にぜんぜん届いていません。
DAzLEは深くそれなりに広くいっていていい線いっていますが、ギリギリ届くか
届かないかといったあたりです。
酷いのはStark et al. 2007の重力レンズを使ったもので、ものすごく深くいっていますが
探査体積の狭さから光度関数へほとんど制限がついていません。彼らはz=7-10で2個くらいは
もっともらしいソースを見つけた言っていますが、それが本当なら個数密度がz~6.6より
10-100倍になっていることになります。



--------------------------
DAzLE装置について
--------------------------
SPIE 2004, Vol.5492-38, pp1022 (astroph-0409080)

・ビジター装置@VLT
・1.06-1.33umに特化されている(1.0-1.8umまで拡大可)(カメラには既存のCIRPASSを使用)
 カメラ以外はそれほど冷やしていない(FMOSみたいな感じ)
・HAWAII2 1枚
・0.2"/pix (視野は6.83分×6.83分)
・z=8.7フィルタのFWHM=71A、透過率=95%
 S/Nを上げるために、予想されるLyα幅ぎりぎりまでFWHMを狭めている。
 (サーベイ体積を犠牲にしてでもS/Nを上げる方針)
・フィルタは、視野の位置によって中心波長がずれるのを利用して、視野をずらして撮った
  2枚の差分をとってFWHMの幅を狭めるという差分撮像という方法を使っている。
  普通のフィルタを使ってディザー幅で透過幅をチューンするという感じ。
 (惑星検出系の装置では、装置内で光路をわずかに変えることで同じような効果を使っている。
   CONICAとかHiCIAOとか。)
 一つのフィルタには二つ透過域がある(波長の近いところで探査ボリュームを稼ぐためと思われる)。
・フィルタは、BarrによってR&D的に製作。
・ブロッキング(使わない波長の遮断率)がかなり高い。強い夜光の遮断には必要。
 #私たちのNB119より1-2桁高く遮断しています。Jでは連続光に比べて強い夜光は
  数十倍の強さがあるので、もしかするとフリンジが出たのは遮断が足りなかった
  せいかと思いはじめました。
 遮断率は10^-4を4と呼びます。私たちのNB119は4、DAzLEは5-6。
 このNB119より後のMOIRCSフィルタは、2um以上長い側を遮断する時は5を指定している
  (実測より4では足りないと判断したため)。安全のため次回は5を指定する。
・光学系のみのNBフィルタ使用時のthroughputは0.32、
 望遠鏡+光学系+検出器込みで0.13(ISAACとほぼ同じ)。
 MOIRCS(望遠鏡+光学系+検出器)はJ-bandで0.15、Hで0.28、Ksで0.26。
 とりあえずNB119付近では検出効率はMOIRCSとほぼ同じか。

----------------------------------------------------
DAzLEの観測状況について (参考:2006年11月の報告書)
----------------------------------------------------
・初めてのコミッショニングが2006年10月末。
  像質は非常によかった(30分露出で0.4")が、背景光が予想より大きく、
  試験の結果、回転式フィルタターレットの角度を少し変えると背景光が変化するなど、フィルタに原因が
  あることがわかり、フィルタをいったんイギリスへ持ち帰り原因追及するとのこと。
  フィルタコーティングの問題と(私たちのようにブロッキング率か入射角の問題かもしれない)、
  もう一つはフィルタホルダー(たぶんアルミ)のつや消しコーティングの不十分か何かにより、
  フィルタとホルダーの間に反射があって迷光となっているかもしれないとのこと。
  (この2つめは明記されてはいないが、そう読める。)
・サイエンス試験としては、zのわかるQSOの[OIII]輝線が受かるか受からないかを
  70A離れた2つのセットフィルタ(引き算して使うセット)で試してうまく分離できたとのこと。
・サイエンス観測はそのあとの2006年11月に9晩行った(期間中lostした時間は天気が悪かった0.5夜のみ)
  ターゲットだけで69時間の積分を取得。
 シーイングは0.4-1.3"。
  使ったフィルタはNB1056/1063(z=7.7用)
  2視野について各9.8時間、10時間の積分、(フィルタが2つで1セットなので、1視野にこの2倍の時間がかかる。)
 シーイングが悪い時(>0.8")は別の浅いフィールドを6視野各2.5時間ほど取得。
  限界フラックスは、10時間、5σ、1平方秒で3X10^18erg/s/cm2。
 満月期に9日連続で観測したが、月齢と距離により背景光にかなり変化があった。
 ここで得たz=7.7候補は、2006年12月と2007年1月に分光されている模様。
  (どの装置かわからないが、ESOのDDT時間を使うらしい。(まさかcomissioning中のFLAMINGOS2ではないと思うが...)
 この報告は2006年11月(観測直後)に作成されたもので、大内くんからR.Ellis情報としてnon-detectionだったのを
  聞いたのは12月上旬だったので、本当に何も受からなかった可能性がある。

------------------------------------
ISAAC/NB119フィルタについて
------------------------------------
・視野2.5'x2.5'、HAWAII-1(1kx1k)、0.148"/pix
・中心波長 1.187um、有効波長幅 89.5A

------------------------------------
他のサーベイによる観測のヒント
------------------------------------
・1回の積分時間は
  20分(Cuby et al.)
  30分(ZEN)
  30分でもデータに問題なし、30分の積分あたりNDR=61で読み出し(DAzLE)。
  シーイングの良い時、天頂スレスレを通る時は
・ダーク引きをする(Cuby et al.)
・フラットはトワイライトフラットを使用(Cuby et al.、DAzLE)。
  トワイライトは日没直後に開始、サイエンスデータはトワイライト終了直前から開始できる(DAzLE)。