NB119 観測レポート  とうこく

2/21/2007 更新
1/05/2007 


2006年12月に狭帯域フィルタNB119で長時間露出試験を行った。
解析手法はまだベストではないが、今季の本観測に向けて、
ざっと限界等級を求めるところまで解析を行った。

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観測
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具体的な観測計画

z=8.7 Lyα輝線天体検出用のNB119フィルタを用いての試験的な初観測。
GOODS-N GT2領域の長時間露出を行った。

・2006年12月29日 26:00から明け方まで。
・天気、湿度、風速は良条件だったが、シーイング 1"以上が続いていた。


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観測メモ
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・シーイングが悪く(0.9-1.3")、NB119でのフォーカス合わせはできなかった。
・フォトメトリックだったので、標準星は検出器上の位置を変えて多数撮った(全面読み出し)。
・スペクトルタイプのわかっている標準星は、全てサチッてしまいデータなし。
・スカイカウントは1200秒で約800ADU。
・バックグラウンドリミット。
・ホットピクセル等がかなり目立つ。
・オートガイダが必要。視野に入り込まないよう注意が必要。
・薄明開始時、AGは可視なので早め(日の出の30分前くらい)でさちった。
  そのあとはトラッキングで撮った。
・NB119は日の出10分前にさちった。
・読み出しは通常のCDS(NDRやDMUMはなし)で行った。
・20分露出でシーイングサイズ内(0.9-1.1")では星像はよかった。
・当日の空の透明度(by CFHT/elixir)

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解析
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4800s積分画像  seeing>1"
 


スカイフラット(左がch1、右がch2)
      ・スカイフラットはカウントが足りないため、きれいに作れない。フリンジが見える。
      ・天体の解析にはNB119のドームフラットまたはJ-bandのGOODS-N GT2のスカイフラット(鍛冶沢ver0.5)を使用。
 

フラットの傾き(左はch1のスカイフラット、右はch1のドームフラット)
 

スカイフラット ÷  ドームフラット  両チャンネルともフリンジがみえる。
 


・NB119のゼロ点
  (1)Faint StandardをJ-bandで測定し、J-bandのゼロ点を求める。
  (2)A0型で明るさのわかっている割算星をJ-bandとNB119で測定し、J-bandの等級を求める。
  (3)A0星モデルスペクトル×フィルタ応答関数から、NB119での等級を求め、また(2)画像より
     天体のカウントを求めて、NB119でのゼロ点を求める。

  

  今回は、スペクトルタイプのわかっている測光標準星については、全てサチッてしまった
  (GOODS-Nで日の出ぎりぎりまでねばりすぎた、、、、)
  が、FS(FS125)がいちおうスペクトルタイプがG8とわかっていたので、それを使ってゼロ点を求めた。

  J(ABmag)      ch1 26.069
                ch2 26.236

  NB119(ABmag)  ch1 23.554
                ch2 23.559

・限界等級
  3600秒の積分画像から限界等級を求めた。

  NB119フィルタの、1時間積分、2"アパーチャ、S/N=5の限界等級は約22.6mag(AB)。
  これは見積もりより浅いので、データ見直し中。
  ISSACフィルタとそれほど違うことはないと思うのだが...。
  (見積もり by 大内君)23.4mag(AB)
                      ISSACと同じthroughputを仮定して、0".7 aperture、5σ。
                      具体的にはISAAC 30時間積分によるJ-band画像の深さからNBのバンド幅、
                      JとNBのsky backgroundの違いなどをスケール。

・波長のシフト 詳しいレポートはこちら
  入射角度による視野内での波長シフトは見積もり通りで、視野中心と端で約35Aシフトがあった。
  これは見積もり通りである。
・両チャンネルともに微かなフリンジが見えた。
・フリンジの原因として、背景光も考えられる。使わない波長域のブロッキングを10^-4と
  指定していた。最近のMOIRCSフィルタは、2um以上をカットする場合は10^-5を使っている。


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次の観測に気をつけること
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・読み出し方法
  全体的にカウントが低いので、リードアウトノイズを抑えるためにも、NDR読み出し等を試してみる。

・ダーク
  非常に長く積分するので、同じくらいの積分のダークも取得しておく。

・標準星の選択
  等級とスペクトルタイプがわかっている標準星で、できればA型星があれば、それをJ-bandとNB119で撮ればよい。
  標準星でスペクトルタイプがわからない場合は、スペクトルタイプと等級のわかっているrationing star等も
  併せて取得する。
  Leggett et al.(2006)だとFSでもだいぶスペクトルタイプがわかってきている。

・フラット画像
  ドームフラットはいちおう15000ADU程度のが5枚あるが、時間があればもう少し撮っておきたい。
  他のNB119サーベイではトワイライト・フラットを使っていることが多いようだ。

・解析
  cosmicrayが顕著なので、きれいな差し引き方を試す。今回のデータでも引き続き試していく。


他のNB119サーベイの近況とそこから得られるヒント

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観測ログ
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MCSA00049299.fits MCSA00049300.fits   600s
MCSA00049301.fits MCSA00049302.fits  1200s
MCSA00049303.fits MCSA00049304.fits  1200s
MCSA00049305.fits MCSA00049306.fits  1200s
MCSA00049307.fits MCSA00049308.fits  1200s
MCSA00049309.fits MCSA00049310.fits  1200s

ドームフラット 600W,5.1A(40V) 21sで約16000カウント。